Category木と作る
2022.11.03

2 days at Ishinomaki Laboratory
7人で向き合った木とデザイン

2011年に宮城県石巻市で誕生し、デザインの力でDIYの可能性を広げる家具ブランド〈石巻工房〉が2022年10月に開催されたDESIGNART TOKYO 2022で発表した新作。それは国内外の7人のデザイナーが手がける、ゲストハウスで使うためのプロダクト。たった2日間で作り上げたというそのプロセスに、改めて〈石巻工房〉の真髄を確かめるとともに、ものづくりや素材との向き合い方において大切なことを教わりました。

展示をきっかけに生まれた、新たなデザインコンセプト

「縁あってこの場所(KAISU)を借りられるということが決まって、どんなことをしたら楽しいかなと考えた時に、石巻工房のことがすぐに頭に浮かんだんです。これまでいろんな人たちが関わって、たくさんワークショップもおこなってきた石巻工房の原点に戻るようなものづくりや展示ができればと」

そう語るのは、〈石巻工房〉のファウンダーであり建築家、デザイナーの芦沢啓治さん。ブランドスタートから10年が過ぎ、DYIをデザインの力で推し進めてきたた〈石巻工房〉の活動は、今では国境を越え広がり続けています。

そして今回、芦沢さんからのご縁をきっかけに、ブランドにとって新しい視点でありながらもその原点を顧みるようなものづくりが、展覧会をきっかけに実現しました。展覧会タイトルは「2 days at Ishinomaki Laboratory(=石巻工房での2日間)」。参加したのは国内外で活躍する7名のデザイナーや建築家。彼らが一堂に工房に集まり、そのタイトルの通り、2日間の滞在で作り上げたプロダクトが会場に並びました。

『石巻ホームベース』のためのプロダクト

〈石巻工房〉から徒歩3分ほどの距離に位置する『石巻ホームベース』。カフェを併設した1Fラウンジは〈石巻工房〉のショールームでもあり、実際に家具やプロダクトに触れながらお茶や軽食を楽しめます。そして2Fには4組の建築家やプロダクトデザイナーが監修した4室のゲストルームを備え、宿泊が可能。そんなさまざまな人々が行き交うこの『石巻ホームベース』で使うためのプロダクトをデザインする。それが今回の展覧会のコンセプトとなりました。

「ゲストハウスにもう少し装飾性や愉しさがあるといいのではないか、という発想からはじまりました。“石巻ホームベースのための”ということで7名のデザインにも一貫性が出ましたし、単なる商品化のためのデザインよりも、いいものが生まれたと思います」と、本展に参加したKIDZUKIのコンセプトディレクターでありトラフ建築設計事務所の建築家、鈴野浩一さん。ベンチやスツール、ハンガーラックやサイドテーブルなど、『石巻ホームベース』というゲストハウスに彩りを添える機能的なプロダクトのプロトタイプが完成しました。

瞬時でありながら濃密な制作プロセス

とにかく瞬く間に制作が進んでいった「2 days at Ishinomaki Laboratory」。事前に各自デザインを出し合い、互いに意見交換や調整を行って、その約1週間後には石巻工房へ。1日目、早速設計図をもとに工房の職人と協働しながら制作を開始し、その日の夜には作ったものをデザイナー各自が担いで『石巻ホームベース』へ。実際に制作したプロダクトを設置、使用しながら皆で食事を楽しみ、議論を重ねたのだそう。そして2日目。午後には展覧会の告知に向けて、完成品のビジュアル撮影を予定していたため、急ピッチで完成作業を行なったといいます。

自ら考えたデザインを自ら工房に持ち込み、自ら手を動かし制作、検証を行い、完成を見届ける。多くの人や会社を介し、分業しながら進めるような普段の工程とは違う今回のプロセスは、デザインをする人、作る人の互いの理解や尊敬、そして「木」という素材との向き合い方に深く触れることができたのではないでしょうか。「木を触りながらつくるってやっぱりたのしい」と振り返る芦沢さんのその言葉に、本プロジェクトの真髄が感じられます。

制作2日目にして最終日の午後に石巻工房内にて撮影したという本展のキービジュアル。

今回発表されたプロダクトは製品化に向けて今後さらに検証を重ねていくのだそう。ある素材で無駄なく、誰でもすぐに作ることができるけれど、ここでしか生まれ得ないデザインや機能をもつプロダクトを生み出す。デザイナーたちがものづくりに向き合ったこの2日間、そして展覧会は、製品化への期待を抱くことはもちろんですが、震災の復興からはじまった〈石巻工房〉の力強いフィロソフィとともに、ものづくりの本質や意義を確かめる大切な接点となったのではないでしょうか。

INFORMATION

Brand 石巻工房
Writing KIDZUKI

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