困った木 vol.1: 水中乾燥させる木材のための木 - KIDZUKI
Category木と作る
2024.04.05

困った木 vol.1:
水中乾燥させる木材のための木

ナノメートルアーキテクチャーによる“困った木”探しの旅を追っていくシリーズ。初回は、名古屋港にあるヤトミ製材さんを訪れて出会った木。ここには流通の過程でドロップアウトさせられてしまった木たちが、海の上で悲しげに揺蕩っていました。

重しとしてしか使われない

今回訪れたヤトミ製材は、日本でも数少ない木材の水中乾燥というものをおこなっている場所です。乾燥させるために浸水させる。いっけんすると矛盾しているようにもとれますが、酸素と日光を遮断することで、干割れや日焼けを防ぎ、細胞内に海水が満ちることで、反りやネジレを低減させるなど、様々な効果が期待できると言います。実は1300年以上の歴史を持ち、伊勢神宮の御用材にも用いられている技法です。この水中乾燥では、木材を完全に浸水させる必要があるのですが、その“重し”として使われているのが、今回の困った木。これらの重しとなる木はどこから来ているのでしょう?

ヤトミ製材の水中乾燥の現場。浮いているのが重しとなっている木たち。乾燥させるための木は完全に水中に。

その多くは、海外から輸入されてきたものの、運送中に傷が付くなどして、材としての価値が失われてしまった木たちです。それ以外にも、鈴鹿の山で切り出されたものの、売り先が見つからず放置されていた木など、 この重しとなる木材自体がそもそも困った状態でヤトミ製材にやってきているというワケなのです。そのまま捨てられてしまうのも可哀想、ということで受け入れ始めたそうです。

流通の問題に向き合うためのセレクト

重しとして朽ちていくしかない運命を抱えた、これら悲しい木を、ナノメートルアーキテクチャーの皆さんが、積み柱として利用するために慎重に選んでいきます。重しとなって、長いこと海に放置されていた木たちの中には、貝が付着し、すでに朽ちかけているものもあります。

「積み柱だったら芯材を通せるので、本来の木の選びかたよりは、自由度が高いんですが、切ってみて中をみてみないとなんとも言えないですね」

今回サルベージされたのは、数種類。買い手が見つからず、山から海へと流れてきた杉もそのひとつです。

「直径があるので、外側が多少いたんでいても、中身は無事なのではないかという期待感があります。ペンキで印が付けられていて、流通の痕跡が刻まれているのも選んだ理由です」

すでに平らに製材されている木もあります。

「これも流通の過程でスライスされたんでしょうけど、いまここにある。もう少しで売れたかもしれないという物悲しさがありますよね」

外国からはるばる日本までやってきたのに、輸送過程で傷がついてしまったために、売り物にならなかったものも選ばれています。

人間の身勝手に振り回された木

今回選ばれた困った木たちには、それぞれ流通というものに翻弄されたストーリーがあります。水中乾燥のための重しという役割は担っているものの、本来期待されていた使い方とはほど遠いものでしょう。大量生産・大量消費という現代の資本主義全般に言える、歪みのようなものの犠牲者と言えるかもしれません。

「積み柱として活用するのはもちろんなんですが、流通にまつわる問題を伝えるメッセンジャーの役割も、この木たちが担ってくれたら嬉しいですね」

この日はおもに流通の痕跡が残る木たちをチョイス。後日、搬送することになった。

困った木というより、人間の身勝手に振り回された可哀想な木。

「もらい手がなくて、ここで海に放り込まれて……。せめてもの救いはヤトミ製材さんという引き取り手がいて、重しとしてでも活用されていることです。必ずしも重しは木じゃ無くても良いはずなのに、役割を見つけてあげています。木への愛が感じられますよね。でも中にはまだまだ使える木たちもたくさんいるし、そもそも流通過程では、立派な木材だったはずなんですよ」

流通から外れてしまった木たちは、ゴミとして処分されることも多いそうです。ピカピカの新品ばかりに目を向けるのではなく、傷物、訳ありな木たちをどう活用していくか。そういうことを探っていくことも、今後「困った木」プロジェクトを考えて行く上で、鍵になっていきそうです。

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PEOPLE

ナノメートルアーキテクチャー

ナノメートルアーキテクチャー

nanometer architecture

野中あつみと三谷裕樹が2016年に設立した建築設計事務所。名古屋市に拠点を構える。主な作品に、リニモテラス公益施設、茶山台団地のリノベーションなど。現在、大阪・関西万博サテライトスタジオ、SOUPタウンプロジェクトなどが進行中。

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INFORMATION

Company ヤトミ製材
Photos momoko japan
Illustration Peko Asano
Writing Takashi Sakurai

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