Category木を知る
2022.11.16

連載:KIDZUKIのチャート
Vol.3 日本の林業 篇

客観的なデータを元にあたらしい「木」の視点を備えるための連載コンテンツ『KIDZUKIのチャート』。 第3回目となる今回は、国内の林業にまつわる生産量、事業体、そして林業に従事する労働力の各動向を知るためのデータに注目していきます。日本における林業の未来とは、木の未来だけでなく、地域の暮らしの持続可能性にもつながる、ひとつの産業以上の存在なのです。

国産材需要が回復し、林業生産は増加傾向に。木材価格も下落に歯止め

日本の林業では長期にわたり木材価格の下落等の厳しい状況が続いてきました。しかし、近年は国産材の生産量の増加、木材自給率の上昇などで、少しずつ回復軌道に向かっています。林業産出額は、丸太輸出、木質バイオマス発電等による新たな木材需要により増加傾向で推移し、平成30(2018)年には18年ぶりに5,000億円を超えました。令和2(2020)年は、新型コロナウイルス感染症の影響による木材需要の減少により前年比3%減の4,831億円となり、このうちの半分を占める木材生産の産出額は、令和2(2020)年は、前年比9%減の2,464億円となりました。

(注)「その他」は薪炭生産、林野副産物採取
資料:農林水産省「林業産出額」

令和2(2020)年の素材(※1)生産量を樹種別にみると、スギは前年比8%減の1,166万m3、ヒノキは前年比8%減の272万m3、カラマツは前年比9%減の201万m3、広葉樹は前年比8%減の185万m3となり、樹種別割合は、スギが59%、ヒノキが14%、カラマツが10%、広葉樹が9%。また、国産材の地域別素材生産量をみると、令和2(2020)年は多い順に、東北(25%)、九州(24%)、北海道(14%)となっています。

また、素材価格に目を向けてみると、スギの素材価格は、昭和55(1980)年をピークに下落してきましたが、近年は13,000~14,000円/m3程度と、ほぼ横ばいで推移。ヒノキの素材価格もスギと同様の状況であり、近年は18,000円/m3前後で、ほぼ横ばいで推移しています。カラマツの素材価格は、平成16(2004)年を底にその後は若干上昇傾向で推移し、近年は12,000円/m3前後の推移となっています。

(注)製材用材、合板用材(平成29(2017)年からはLVL用を含んだ合板等用材)及びチップ用材が対象(パルプ用材、その他用材、しいたけ原木、燃料剤、輸出を含まない) 資料:農林水産省「木材需給報告書」

※1)製材・合板等の原材料となる丸太(原木)

林業を営む事業体数は大幅に減少中。存在感を高める森林組合の動向に注目

つぎに林業経営の動向に目を向けると、保有山林面積が1ha以上の世帯である「林家(りんか)」の数は約69万戸と平成17(2005)年の約92万戸に比べ約23万戸減少しました。また、保有山林面積が10ha未満の林家が全体の88%と小規模・零細な構造となっているが、この層の林家の減少幅が特に大きく、平成17(2005)年から約21万戸減少しました。一方、林業経営体(※2)の数は約3.4万経営体で、平成17(2005)年の約20万経営体から大幅に減少しました。林業経営体数を組織形態別にみると、家族経営で法人化していない個人経営体が全体の81.7%と大半を占めるが、平成17(2005)年の約17.7万経営体から約2.8万経営体と著しく減少しています。

(注)平均保有山林面積は、保有山林がある林業経営体における平均値 資料:農林水産省「農林業センサス」

※2)林業経営体とは(ア)保有山林面積が3ha以上かつ過去5年間に林業作業を行うか森林経営計画を作成している、(イ)委託を受けて育林を行っている、(ウ)委託や立木の購入により過去1年間に200m3以上の素材生産を行っている。ア~ウのいずれかに該当する者

素材生産を行った林業経営体数は、平成17(2005)年の13,626経営体から5,839経営体と減少する一方で、素材生産量の合計は増加し、1経営体当たりの平均素材生産量は平成17(2005)年の1.0千m3から3.5千m3に増加しています。年間素材生産量が1万m3を超える林業経営体の生産量全体に占める割合は約7割まで伸展しており、林業経営の規模拡大化が進行中です。

個人経営体が急減する中で、存在感を高めているのが森林組合です。森林所有者の協同組織として、組合員への経営指導、森林施業の受託、林産物の生産・販売・加工等を行いながら利益還元のための中心的役割として期待されています。令和元(2019)年度末の数は613組合で、全国の組合員数は約150万人。実際に、森林組合での総事業取扱高は2,734億円と、事業規模も拡大傾向にあります。

資料:農林水産省「農林業センサス」(組替集計) 

減っていく林業従事者。若手の担い手の増加が未来の希望に

最後に、林業に従事する労働力のデータを見ていきたいと思います。林業生産活動を持続可能としていくために、その推進役を担う林業従事者の育成・確保は必須事項となっています。また、林業労働力の確保は地域資源を活用した雇用の創出や、定住化による山村の活性化という視点からもとても重要です。

林業従事者数は長期的に減少傾向にあり、平成27(2015)年は約4.5万人となっています。作業別にみると、森林資源の成熟化により育林従事者が必要とされる場面が減少し、育林従事者数は減少傾向で推移しています。他方、素材生産量の増加が続く中で、高性能林業機械の普及等が進んだことで生産性が向上しており、それにより伐木・造林・集材従事者数は横ばいで推移しています。

(注1)高齢化率とは、65歳以上の従事者の割合(注2)若年者率とは、35歳未満の従事者の割合
資料:総務省「国勢調査」

また、平成17(2005)年の15~54歳の林業従事者数と、その10年後に対応する平成27(2015)年の25~64歳の林業従事者数を年齢階層ごとに比較すると、特に若年層において増加が見られます。これらの結果、林業従事者の若年者率は、全産業の若年者率が低下する中、ほぼ横ばいで推移するとともに、平均年齢は、平成27(2015)年には52.4歳と、平成17(2005)年の54.4歳からは下がっており、若返り傾向にあります。

その担い手、特に若年層の関心が向いている今だからこそ、より一層の林業労働力の確保のためには、人材育成や賃金水準、安全性などの労働環境の改善を通じて魅力を高め、定着率を高めていくことが重要です。

>>次回 KIDZUKIのチャート「Vol.4 木材需要とグリーン成長 篇」に続きます。

INFORMATION

Illustration Daisuke Kageyama
Writing KIDZUKI
主な出典: 林野庁「令和3年度 森林・林業白書」

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