Category木のケーススタディ
2022.09.29

KIDZUKI for Office
Vol.2 「KIDZUKI LIBRARY」ができるまで

“木と出会い 想いをつなぎ 共に未来を創る場所”というメッセージを掲げ、2022年6月に移転オープンした三菱地所ホームの新オフィス『TOKYO BASE』。国産材の木造木質化への意識の強化はもちろん、オフィスで働く人それぞれの感性を刺激するワークイノベーションのための材料としての「木」の可能性に触れたVol.1に続き、今回はここから生まれたオフィス家具「KIDZUKI LIBRARY」の制作プロセスに迫ります。使い手だけでなく作り手にとっても、「木」からあらたな気づきがもたらされました。

オフィス空間のための木製家具の役割

「木」を中心に働く人、働く空間への考察を重ねる「KIDZUKI for Office」。その最初のプロダクト制作は、KIDZUKIのコンセプトディレクターでありトラフ建築設計事務所の建築家、鈴野浩一さんが、木とオフィス空間のあり方を考えることからはじまりました。

「木は森と時間をともにし、その記憶を刻みます。 切り株、倒木、年輪を包み込む豊かな樹幹。 多様な木の姿は、森の過ごしてきた長い年月と関わる人の営みを想わせます。 Moriというキーワードと木造木質化に取り組むKIDZUKIとの出会いが、森と人が関わる場に着想を得た空間を生み出しました。自然物の持つ力強い存在感や暖かさを特徴とした家具から感じる木の匂いや質感。都会のオフィスにありながらも、人の手によって光が入った森を思わせる空間で思い思いに過ごせば、リラックス出来るだけでなく、新たな創造性を生み出すインスピレーションも得られます」

「KIDZUKI LIBRARY」のデザインに際し、木製の家具があるオフィス空間をイメージしたスケッチ。(提供:トラフ設計建築事務所)

『TOKYO BASE』のオフィス中央に設けられたリチャージスペース「Mori」。社員が休息をとりながらも外部情報をインプットできるこの空間で、さまざまなジャンルの書籍や雑誌、映像などを収納した家具として生まれたのが「KIDZUKI LIBRARY(キヅキ ライブラリ)」です。

「ライブラリ」は、“本、書籍だけでなくプログラムなども含む複数の記録を、再利用可能な形でひとまとまりにしておく場”という意味をもちます。「KIDZUKI LIBRARY」は、その語義の通りさまざまな媒体や情報だけでなく、「木」が再利用可能な形で積み上げられている様子や年輪という形で森や木の記憶をとどめていることから、森や木の記憶を保存する集合体であるということにも由来しています。ネーミングにも「KIDZUKI for Office」としてのコンセプトが込められているのです。

「まかない家具」から得るインスピレーション

Vol.1のインタビューにもあるように、材料の提供と加工を担った〈三菱地所住宅加工センター〉の端材置き場から着想した「KIDZUKI LIBRARY」。それ以外にも、今回手がけたオフィス家具は、工場で働く人々が、それぞれの加工、制作のオペレーションを円滑に行うために自ら作った道具や什器、いわゆる「まかない家具」からデザインのインスピレーションを得ていることも特徴的です。

「三菱地所住宅加工センターの端材置き場からヒントを得て、木材をブロックのように組み上げて作られる家具は、大きな木が放つような強い存在感をオフィス空間に加えます。そしてその家具に座ったり手を添えて本に手を伸ばすと、年輪や木の質感を指先に感じられます。そんな家具のそばで、書籍や映像とともに過ごす時間から新たな価値が生み出されると思うのです」(鈴野)

これまでにない家具作りのアプローチ

実際に設置するオフィスフロアの耐荷重や人が使用する上での安全面を考慮しながらも最低限の加工で無駄なく、そして端材置き場で見たあのたたずまいの再現を目指した「KIDZUKI LIBRARY」。端材を組み上げ、オフィス家具としての命を吹き込んだのが、制作を担当した国内最大手の木製家具メーカー〈カリモク家具〉です。

「図面をもとにしながらも、その通りの寸法に作るのではなく、端材の形や長さを活かしてなるべくカットをせずに、どう積んでいこうって現場でライブみたいに作っていったんです。カリモクとしてこういった仕事はしたことがないですし最初は心配ばかりだったんですけど(笑)、あたらしいことだし、楽しもうという気持ちで参加しました。結果皆さんの協力もあってよいものができたと思っています」

と制作過程を振り返る、今回のプロダクトの制作指揮をとった〈カリモク家具〉の中嶋光則さん。普段の同社の家具作りとはまったく違うアプローチだったそうですが、KIDZUKIへの賛同、そして端材が置かれる様子をインスピレーションにしているからこその、材の有効活用を大切にしたと言います。一見、大きな積み木をランダムに組み立てるような動きではありますが、土台にフィットするサイズの端材の組み合わせや重量のバランスを緻密に検証しながら制作は進みます。

「これらの家具は端材に合わせて作るので、材が違ったり作り方も変わりますが、多様性はあるけれど親和性がある、そんな空間に仕上げてくれるのかなという気がしますね。改めてものづくりのおもしろさを感じました」

こうして三菱地所ホームのオフィスのための第一弾のオフィス家具が完成。今後ニーズのある場所や量によっても内容は変化し、さまざまな検討材料も出てくることでしょう。オフィスという場所をきっかけに、使う人、作る人、加工する人……この家具に関わるすべての人々が得たそれぞれの気づきがまた、次のソリューションにつながります。

INFORMATION

Company 三菱地所住宅加工センター
Company カリモク家具
Photo Manami Takahashi
Writing KIDZUKI

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