Category木と作る
2022.12.01

mui Labが追求する
人・自然・テクノロジーの調和

わたしたちは、木や天然素材がもたらす心地よさを知っています。そして、パソコンやスマートフォンなどデジタルデバイスがもたらす快適さも知っています。どちらも必要とされる現代社会において、本当の豊かさとはなんでしょうか? その問いかけを追求し、より本質的かつ持続的なものにするために、「自然素材を用いたデジタルテクノロジー」というひとつのアプローチがあります。京都に拠点を置く〈mui Lab(ムイ ラボ)〉の思想から生まれたプロダクト。ここでも木の存在が重要な役割を担っていました。

毎日にそっと佇む、木製インターフェース

外出先からもエアコンや照明を付けたり、家電のリモコンをひとつにまとめたり。IoTを軸に、暮らしを快適で便利にしてくれるスマートホーム化が進んでいます。「muiボード」はそんなスマートホーム体験を提供する、天然木のタッチパネルディスプレイ。しかしそれは、ただ生活を便利にする家電に留まりません。空間に溶け込むデザインや情緒に触れるインタフェースによって、わたしたちを豊かで穏やかな暮らしの本質にそっと導いてくれるのです。

「muiボード」は手書きや音声メッセージのやりとりができる「家族とのコミュニケーション」機能が特徴的で、そのほか天気予報やカレンダー等の「情報掲示」や照明やエアコンの操作等の「IoTのリモートコントロール」機能が備わっている。©️mui Lab

「家電ってどれも電器屋さんの店頭で主張しながら並んでいるように見えて、家で見たら部屋に全然そぐわないことが多いなと思っていて。もっと空間に馴染むものが必要だと考えていたんです。muiボードの素材は、ガラスや革、ファブリックなどいろいろ試す中でも木が良いなと思っていて、その根拠が欲しくて家具に使われる広葉樹の森が多い飛騨を訪れました。そこで木と気持ちよさそうに触れ合う子どもたちの反応が、とても印象的だったんです。それで『木がやっぱりいいね!』と確信して、1年がかりで試行錯誤し製品化に至りました」と、同社のクリエイティブディレクターの廣部延安さん。自分たちのフィロソフィを形にするために、木という素材の採用は自然かつ必然的なことだったようです。

©︎mui Lab

「わたしたちのプロダクトは、情報過多にならないようなキュレーションをしています。ただ通知やニュースを表示するというよりも、手書きのメッセージを残したり、家族のつながりを感じられるようなこと。その際、木が人間の身体に与える気持ちよさが、穏やかに効いてくると思うんです。体験においては、“記録する”というテクノロジーの長所と、”キュレーションする”という人間の長所の違いを最大活用して、人側に能動的に選択させる余地を残す、そういった余白のデザインを意識しています」と、同社のPR&ブランディングマネージャーの森口明子さん。

使用していない時は木のボードが空間の一部となり、機械であることを忘れるような存在にすることも重要な狙いでした。

「長押(なげし)や手すりのような日本の建築部材に見間違えられないかな、というところからデザインを考えていきました。どうやったらプロダクトの存在感がなくなり、何も表示していなくてもよい佇まいとして成立するかという点にはこだわりました」と、廣部さん。

©️mui Lab

mui Labが目指す“カーム・テクノロジー”の解釈と実践

気配を消すようなさりげない存在でありながら、日常の動きだけでなく心も快適に穏やかにしてくれるmui Labの提供するデジタルテクノロジー。それを”mui”の由来でもある「“無為自然”なデジタルのある暮らし」と彼らは言います。この木という自然素材を用いたタッチパネルディスプレイの背景には、「カーム・テクノロジー」の設計思想がありました。それは、いつでもどこでもユーザーが意識することなくコンピュータを通して情報にアクセスできる、ユビキタス・コンピューティング時代を見据え、1990年代にマーク・ワイザーが提唱した概念です。

すでにデジタルデトックスという言葉が溢れているように、1人4〜5台のデバイスを当たり前に見ているような現代では、テクノロジーによる快適さと同時に、知らず知らずのうちに負荷がかかってしまっていることも事実。だからこそテクノロジーが適切に存在し、人と自然と調和させ本来の豊かなデジタルライフの姿を提案するために、mui Labは本当のウェルビーイングを追求し続けています。彼らが京都に拠点を置いていることもその理由のひとつ。

©️mui Lab

「京都は自然を身近に感じられる場所。山に行くとなぜか人は挨拶し合うという姿があるように、自然とつながると人間同士の関係を大切にするようなことが、デジタルテクノロジーでもできないか? ということを考えています。また、京都には古くからの日本の文化や風習も数多く残っています。例えば、厄除けのために節分にイワシの頭を玄関に飾る“柊鰯”や、存在で境界を示す“止め石”や“屏風”など、直接的ではないけれど、日本人ならではの気配や空気を読み、相手に察する余地を与えるようなデザインに美しさを感じ、デジタル情報と人との関係性の設計に応用しています」と、森口さん。

デジタル版「大黒柱」のある暮らし

そして2022年11月、〈mui Lab〉の思想がまたひとつ大きな形となり実現しました。プロダクトを実際の生活空間に落とし込んだスマートハウス「muihaus.」が誕生。カーム・テクノロジーの理念が取り入れられた家族の物語を記憶するこの家には「muiボード」ともに、木の柱型のインターフェース「柱の記憶」が佇んでいます。

“時を超えて家族の絆を深める”をコンセプトに〈mui Lab〉と〈JIBUNHAUS.〉の共同開発によるスマートハウス「muihaus.」が、2022年11月18日に佐賀県多久市のスマートタウン「SCOLTOWN」に完成し、販売を開始。©️mui Lab

「柱の記憶」は、木製の柱にデジタルペンを使って手書きの文字を記憶できるプロダクト。昔から家族にあった、家の柱に子どもの身長の印をつけるという習慣にテクノロジーを取り入れたもので、実用性よりも家族にとって大切な時間を感じられるような設計となっています。

「今は建築的にも大黒柱は見なくなりましたよね。それとともに大黒柱を“父”に喩えるようなこともなくなりました。だからこの『柱の記憶』が、家族を支えてくれる存在になったらいいなと思っています」

嬉しい日も、悲しい日も、なんてことない日もすべてが日常で、かけがえのない時間。そう感じられるように、毎日触れながら記憶を刻み込み、木も風合いを増していく。穏やかなテクノロジーと自然の調和によって、わたしたちは本来の豊かな暮らしを見つけることができそうです。

INFORMATION

Company mui Lab
Writing KIDZUKI

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