三菱地所住宅加工センター 木造建築の未来を考える - KIDZUKI
Category木のケーススタディ
2022.08.30

三菱地所住宅加工センター

木造建築の未来を考える

「木の家を建てよう」ーそう思わせてくれるような人たちの仕事がここにあります。千葉市に本社工場を構える〈三菱地所住宅加工センター〉。家の構造体の部材を仕入れ、管理し、加工を施し建築現場に届けるという、家づくりにおける裏方的存在ですが、私たちが当たり前に「安心安全に住む」ための、もっとも大切な工程を担っています。この産業ならではの意識や取り組みから知る「木」で建てることの意義、そして木の未来を考えるきっかけが生まれそうです。

国産材利用によって進む〈三菱地所住宅加工センター〉の革新

三菱地所グループが手がける住宅に、高品質かつ安定的に建材を供給するために設立された〈三菱地所住宅加工センター〉。国内外の製材所から仕入れた2×4住宅の構造用製材などの積算、プレカット、アッセンブル、販売、建築現場での構造躯体の建て方までをフルサポートしている場所です。2021年のウッドショック以降、輸入材の不足、価格高騰、新型コロナウィルス等が影響し、国産材の需要が高まっている現状があります。国内の製材量を増やすために新規参入する事業も増えている中、〈三菱地所住宅加工センター〉では国産材のサプライチェーンの構築を先進的におこなってきました。その背景には、国産材にこだわる同グループの住宅メーカー、三菱地所ホームからの発注が大きく影響しています。国産材は輸入材に比べてコストが高く、同社の事業全体の中での取り扱いシェアは約2割ではあるものの、毎年一定量を確保できているということはつまり、国産の木の良さやそれを使う意義がエンドユーザーにしっかり伝わっているとも言えます。そして、積極的な国産材利用のほか、フルオーダーの自由設計という三菱地所ホームの住宅へのこだわりが、〈三菱地所住宅加工センター〉の難易度の高い木構造の加工対応力や計画生産力を向上させ、事業の革新へとつながっています。

社会的動向がターニングポイントに

近年では、カーボンニュートラルの実現に向けた公共建築物等木材利用促進法の施行にともない、公共福祉施設や公共教育施設などの非住宅の木造化が進んでいます。ウッドショック同様、このようなさまざまな社会的な動きが、〈三菱地所住宅加工センター〉の事業にはダイレクトに影響を及ぼしているのも事実。その中で、同社が非住宅事業への活発な取り組みを推進できているのは、住宅で培ってきた木造建築の経験があるからこそ。当初は小さな事業領域でしたが、だんだん拡大しているそうで、同社にとっても大きなターニングポイントになったようです。

「国産材にシフトしていくという必要性は、さまざまな社会の動きから10年前でもすでにわかっていたことではあります。これまで我々が難易度の高い非住宅レベルの住宅を手がけてきたことで得たノウハウが、今この時代に活きていますね。国産材利用という観点と、難易度の高い加工。その両方を組み合わせて、今のニーズに合った非住宅へのサービスの提供ができているのだと思います」

そう語るのは〈三菱地所住宅加工センター〉取締役社長の中島秀敏さん。現在需要の高まっている非住宅への確かな対応力は、三菱地所ホームのようなこだわりの強い住宅だけではなく、他のハウスメーカーの合理性を追求したシンプルな構造の住宅も手がけてきたことで培われた、独自性もそのひとつ。

「お客様は多数いらっしゃいます。システム化された住宅を効率的に建築し伸びている会社もあれば、こだわりのフルオーダーの住宅で伸びている会社もある。我々はその両方とお付き合いしているからこそ、できることが多くあったと感じています」

エンドユーザーに伝えるべき「木」への意識

「昔は、お父さんが裏山から木を切り出してきて、グリーン材(未乾燥の製材)をそのまま使って、自分で加工して家具をつくるなんてこともありましたよね。それってものすごく木が身近にあり、木の良さも感じやすかったと思うんです。でも今は、多くの工程を通って家を作っていますよね。産業として必要なことではありますが、その遠回りをした分、木が遠のいてしまったようにも思います。だから少しでも木を身近に感じられるような仕組みができれば、家=木ということに対する意識が高まるかもしれません」と中島さん。私たちがこの時代に安心安全に暮らすことができる家づくりのためには、当然多くの工程が必要です。しかしそこで木の本質を見失わないためにも、〈三菱地所住宅加工センター〉からエンドユーザーに伝え続けるべきことがあります。

「癒し効果と環境負荷軽減。木を使うことが人の健康も地球も守ることにもつながるという木の良さは、もはや言わずもがなの話ですよね。我々がエンドユーザーに伝えたいのは、コストが少しかかってでも、この2つを循環させ未来の環境を変えていく意識を持ってもらうこと。そして木造建築が増えればその分技術力も上がり、コストパフォーマンスも高まります。そうすると参入する人たちも増えて産業が拡大し効率も上がり、事業も含んだ良い循環が生まれるんです。それをみんなで作っていこうということを伝えながら仕事をしていくのが、我々の役目だと思っています」

家づくりにおける〈三菱地所住宅加工センター〉の取り組みは、日頃生活者の目に直接触れることはほとんどありません。しかし常に先を見据えた社会の動向にも揺るがない対応力と高い技術力は、着実に木造建築の未来を支えています。木造建築が増えることは、木への意識が向上しているという証。そうやって私たちは彼らの存在を身近に感じるのでしょう。

INFORMATION

Company 三菱地所住宅加工センター
Writing KIDZUKI
Photos Manami Takahashi

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