高知県馬路村と高橋成樹東京での再会とこれから - KIDZUKI
Category木と作る
2024.04.23

高知県馬路村と高橋成樹
東京での再会とこれから

魚梁瀬杉との出会いから数日で作品を作り上げたwood artistの高橋成樹さんが、3月に東京での個展を開催。前回制作した「ビッグチーズ」に続き、また新たなアプローチで魚梁瀬杉の作品が完成しました。高知県馬路村の村長、森林組合の皆さんも東京での個展初日にかけつけ、改めて魚梁瀬杉の魅力を実感したようです。

魚梁瀬杉✕高橋成樹で挑戦したローテーブル

3月1日(金)から3月4日(月)まで、東京・南青山のギャラリーにて開催された今年最初の高橋さんの個展にて、また魚梁瀬杉を使った新作が出品されました。おなじみのケーキスタンドや花器、オブジェ等が並ぶ中、今回は、前回よりも大きな作品を手がけられたとのこと、さらなる期待が高まります。会場に入るやいなやひときわ目を引く2つの大きな作品の存在がありました。

前回(2023年12月に開催)の東京での個展に出品し、すぐに売却済となった新作、魚梁瀬杉の「ビッグチーズ」。(写真中央奥)

今回高橋さんが手がけたのは、輪切り状と板状の2種類の魚梁瀬杉でそれぞれ作った「ローテーブル」。もとの形を活かしながらチェーンソーとサンダーで表面を整え、オイル塗装で仕上げられています。また、どちらの脚にも鉄でできたボールが採用されています。

「昨年最初に作った作品よりも、今回の方が扱いやすかったように感じましたね。この脚に使った鉄の玉は、高知の職人に特注して作ってもらいました。和室にも置いてほしいなと思って作りましたが、このギャラリーのように無機質な床にも映えますね」と高橋さん。和室や料亭など、銘木を使った一枚板のテーブルは昔から存在するものの、魚梁瀬杉が持つ風合いと高橋さんのデザインがかけ合わさり、とても現代的で新鮮な印象を受けます。これまで長く魚梁瀬杉に触れてきた馬路村の方たちも、そう感じたようです。

素材✕デザインで魅せる独自の世界観

「今回初めて作品を見させていただいて、デザインの力と高橋成樹さんというアーティストの力、やはりその両方ががすごいと感じました。これまでは素材の良さはわかっていたものの、それをどういう世界観で見せるかということができていなかった。無加工で一般的な座卓が多かった中で、このような加工をしたものは初めて見ましたし、割れを活かすなど、私たちにはなかった発想にも驚きました。この木目は、魚梁瀬杉の中でもとても珍しいもので、素材の良さが引き出されていていいですね。そしてその良さを、東京の方たちに見ていただけたことに、とても意味があったと思います」

そう語るのは、会場にかけつけた馬路村の山崎 出村長。馬路村ではこれまでも魚梁瀬杉を使ったさまざまなプロダクトを制作、発信してきましたが、高橋さんのようなアート作品という新たなアプローチに希望を抱いています。

通常だとまっすぐ整えられてしまいがちな割れや欠けも、高橋さんの作品では当たり前で、それが魅力となっている。
天然魚梁瀬杉の魅力のひとつにある独特な木目。その中でも、今回ローテーブルに採用した材は中でも特に珍しい、と山崎村長。
馬路村の山崎村長(左)と高橋さん。制作プロセスや魚梁瀬杉の特徴についてなどの会話が飛び交います。

実際に高橋さんが魚梁瀬杉で制作したのはまだ数点でありながらも、作品は完売。その実績を受け、”新たな価値”の創造がまた一歩前進したのではないでしょうか。

「工業製品ではなくアートだからこそ、魚梁瀬杉の価値をよりよく伝えられるのではないかと、高橋さんの作品を見て感じました。高橋さんによる魚梁瀬杉の作品が発表されるごとに注目されてほしいと思いますし、他のクリエイターの方々にもぜひ使っていただきたい。ゆくゆくは魚梁瀬杉を中心としたイベントも実施できたらいいですね」と、今回の個展をきっかけに、次への構想も膨らみます。

新しい素材で大きな作品作りへと挑戦した高橋さん、そして貴重な魚梁瀬杉の在庫の最適な活用をまたひとつ見出した馬路村。短い期間の中でありながらも、これまでとは違う未来を描き出したコラボレーションは、これからも着実に進化していきそうです。

天然魚梁瀬杉 発掘プロジェクト
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PEOPLE

高橋 成樹

高橋 成樹

Naruki Takahashi

高知県生まれ。健康な森を育て間伐し木材を生産する山師であり、木を加工して作品を作るwood artist。両軸の活動を通して真摯に山や木と向き合い、正しい知識や情報を伝えることを目指す。

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Photos Kohei Yamamoto
Writing Mana Soda

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