〈オークヴィレッジ〉 森の中の工房で育む、木の文化 - KIDZUKI
Category木と作る
2024.11.08

〈オークヴィレッジ〉
森の中の工房で育む、木の文化

今から50年前、自然環境への負荷に危機感を抱いた5人の若者が、岐阜県高山市の森の中で木工房を創設。それが〈オークヴィレッジ〉のはじまりです。創業当時から掲げている「自然との共生」そして「循環型社会の構築」という、木のものづくりを通じた理念とそこに基づくさまざまな活動は、未来を見据えて実践し続けることの大切さを教えてくれました。

木とともに築き続けた
オークヴィレッジという理念

JR高山駅から西に10kmほどの清見町牧ケ洞にオークヴィレッジの本社はあります。高山のまちなかを流れる宮川に注ぎ込む牧谷川の上流域で三方を山に囲まれた谷間に位置し、静けさの中に広がる深い緑と沢の水音がとにかく心地よい場所。現在は国産無垢材の家具や器や玩具などの暮らしの日用品から、木組み技術を継承した木造建築、そして樹木を香りに活用したアロマ製品などその事業は多岐に渡り展開していますが、ここは1974年に5人の創業メンバーが、持続可能な循環型の社会を体現する「緑の国」を目指し移住してきた場所で、当初はなんとススキ野原だったのだそう。そこに木を植え、工房や住宅を建てながら、少しずつオークヴィレッジを作りあげていきました。そして2023年に創業50周年を迎えた同社は、近年世界中で謳われている「自然との共生」や「循環型社会の構築」への意識を創業時から掲げ、3つの理念を信条に活動を続けています。

理念

100年かかって育った木は100年使えるものに

私たちが用いる材料は、永い時間をかけて大きく育った木です。
その木が生きた年月と同じくらい、永く使い続けられるモノ造りを目指しています。

お椀から建物まで
日本に生育する様々な木を用いて、玩具、文具、漆器から家具、そして木造建築まで、
暮らしの様々な場面で自然素材を活かす提案をしています。

子ども一人、ドングリ一粒
木を使ったら、100年後に同じ大きさになるドングリを植えて木を山へ返そうと考え、
広葉樹の植林・育林を行っています。

ーオークヴィレッジ社のHPより引用 

「50年、この3つの理念を掲げて、木を使ったものづくりをおこない、それらを長く使っていただけるような発信をしてきました。木を植えて育てて、大きくして。そしてまたその種で新しい木を育てて……という循環型の素材である木を、人の手や想いでもって枯渇させないことが私たちの活動です」と、オークヴィレッジ営業部の服部修さんは言います。今も変わらないその活動理念を、まさに体現しているのがこの場所でした。そして実際に敷地内を歩きながら、彼らのものづくりにおいて大切にしていることに触れます。

手作業の最高限を目指す
100年使える木のものづくり

オークヴィレッジは、ショールームやショップ、家具や塗装など各制作セクションの工房、材料庫、設計棟などに分かれており、敷地内にはシンボルツリーであるトチの木や川のせせらぎを感じられる散策道など、本社や工場といった生産機能を持つ場所だけではなく、心地よく森と共生することにも重きを置いた環境の中にあります。各工房では若手からベテランまで約40人の職人さんが、自らのアイデアを出しながら少人数制で制作をおこなっています。

ショールーム棟とショップ棟
各工程ごとに分かれる工房。中には廃校を移設したものも

「現在東京や大阪の販売店も含めると約80名のスタッフがいます。小回りの効く”大きな工房”という感じでしょうか。手作業でできる上限までを目指していて、大きな規模の産業ではできないような、職人が見たり触れたり、あるいは勘といった数値化できないものも含めてものづくりをおこなっています。アイデアを実行に移すことができるので、一人ひとりが非常に活躍しやすいのではないでしょうか。常にチャレンジをもってやっていますね」と服部さん。

そして、国産材を活用すること、環境への負荷の少ない植物由来の天然塗料を使うこと、木への影響を考慮し構造になるべく金物を使わずに木組みで作ることをベースに「100年使えるものづくり」を目指すのが、オークヴィレッジのものづくりへの考え方です。

「国産材、もっと言うと地域材をどう活用すればその地域が発展するかということも大事にしています。この地域の材だけでなく、その樹種によって地域を選定しているんです。たとえばコナラ材だったら、群馬産のものを仕入れています。計画伐採に基づいた仕入れももちろんありますが、適材適所の考え方で、その材が得意な地域を応援するようなものづくりができればという考えです」

適材適所の考え方は、各製品がどの部材に適しているかという判断にも通じます。オークヴィレッジが家具づくりに仕様している広葉樹は、曲がりや木目の表情など、一本ずつ個性があるのが特徴なので、製材の際に確かな見極めと判断が重要となります。

一本のナラの木から「適材適所」の使い分けを示したイメージ。若くて粘り気のある材は椅子の脚に、古木の希少な木目の板は食器棚の扉の鏡板に、伸びやかで色目が美しい板はテーブルの天板にと、きめ細やかに木を見極めて使っている。(画像提供:オークヴィレッジ)

「50種類くらいの木を扱っていることも、私たちの特徴ですね。無垢の木の個体差がありますし在庫の管理の問題もあるので、本来はあまり好ましいことではないのかもしれないですが(笑)、そのことで、木の個性や適材適所のことなど木工の発信ができればと思っています。積み木ひとつとっても15-6種類くらいの樹種を使っていて、木そのものの重さや手触り、香りといった木育の第一歩の部分を担うことも大切にしています」

日本の森に住む身近な動物をモチーフに、5種類の広葉樹を使った「森のどうぶつみき」。

次の50年に向けて
今取り組むべき実践と構想

常にずっと先の未来を見据えてオークヴィレッジが実践してきたことに、ようやく時代が追いついてきたようにも思える昨今。これまでと変わらない理念のもと、さらなる変化や革新を続けます。2020年には環境活動の指針「環境経営宣言」を策定し、自社完結型の完全なるカーボンニュートラルへの取り組みを行っています。

お話をうかがったオークヴィレッジ営業部の服部修さん

「ものづくりをおこなっている会社が排出している二酸化炭素や使用する電力、スタッフが車通勤時に使うガソリンなど、全ての排出量をまず算定し、それらを吸収するために森の拡充や、電力の見直しなどを5年計画でおこなっています。今年中には自社内でカーボンニュートラルが実現する予定です。そのためにただ森を買って増やしているのではなく、そこで育った木を自分たちの手で管理し、間伐して、時にはお客様と一緒に体験しながら小物を作るワークショップなどもおこなっています。そこから小さくても森や木のことに気づきを得てもらえればと」

さらには現在、オークヴィレッジ内に生息する樹種だけを使った住居を作ってみようという構想も描いているのだそう。自分たちで伐採、製材、乾燥を経て建てるにはもう少し時間がかかることで、まだまだ計画段階とのことですが、小さな敷地の中で生まれる循環の中で、森と直接関わる文化を作ることはかつて人間がおこなってきたこと。それを改めてテーマに掲げ、長い目で実践する彼らの、すこしだけ近い未来が楽しみでなりません。

INFORMATION

Company Oak Village
Photos Mina Soma
Writing Mana Soda

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